第3章 世界のけん玉の型分布と植民地支配

 複数の穴があけてある小動物の肩胛骨と25cmほどの細長い骨のけん先がひもで結ばれたエスキモーのけん玉は、けん玉と糸との関連を探る民俗学的に貴重な資料です。「図説エスキモーの民俗誌(原書房)」
 民俗学、歴史学、各種文献等で、各種の世界のけん玉を長年にわたり観察してきたところ、世界のけん玉の分類はA型〜E型の5分類にすることができるようです。世界のけん玉分類は、けん玉進化を説明する一つの視点です。分類方法は無数に存在することが数学的に証明されているので、ここでは、民俗学的分類論を採用しております。

(1)世界のけん玉の要素

 世界のけん玉は糸を中心に、次の要素の一部又は全部から構成されております。

  共通要素(糸なしの例外もあります)
   1)糸(ストリング)
   2)糸穴(ストリングホール)

  基本要素
   1)けん(ポイント)
   2)玉(ボール)
   3)皿(カップ)
   4)穴(ホール):玉穴又はけん穴
     ※メキシコのけん玉には、けん穴があります。

  特殊要素(各種けん玉特有の要素)
   1)けんの突起(例:すべりどめ)
   2)玉の突起 (例:メキシコ製のけん玉にみられる突起)

(2)けん玉の分類

A型[オールマイティの頭文字よりA型と呼称する]
 基本要素は、けん、玉及び皿であり、下記B型及びC型の総合型であり、典型的な日本のけん玉がこの型です。

B型[ビルボケの頭文字よりB型と呼称する]
 基本要素は、けん及び玉のみであり、フランスのビルボケが典型例です。世界のフランス圏に分布するルーツ的な型です。

C型[カップアンドボールの頭文字よりC型と呼称する]
 基本要素は、皿及び玉のみであり、カップアンドボールが典型例です。世界のイギリス圏を中心に広く世界に分布する型です。

D型
 基本要素は、皿及びけんのみであり、玉が要素に無い特殊けん玉です。日本の昔からの手作り竹製けん玉、グアテマラの特殊けん玉等が該当します。

E型[その他を意味するETC.の頭文字よりE型と呼称する]
 上記以外の要素の組合せ又は特殊要素を持つ分類不能型です。日本けん玉協会考案のたまたま(公認けん玉のたまを2つ糸で結んだもの)、メキシコ製の特殊けん玉(玉に突起がついていて、竹の筒で玉の突起を受ける特殊けん王)等が該当します。

(3)植民地支配とけん玉の型

 B型のフランスのビルボケは、中世貴族の大人の遊び道具であり、フランスのことわざに「ビルボケするより難しい。」というのがあり、「そいつはすごい!」という賞賛を意味します。歴史地理的には、フランス植民地が多い南米に多く見られます。
 C型のカップアンドボールは、イギリスの女の子の優雅な遊びとして、明治8年出版の文部省翻訳書「童女筌(どうじょせん)」に紹介されています。大英帝国の植民地であるインド等のけん玉はこの型が多いようです。
 けん玉は、植民地時代に爆発的な世界的普及と進化を遂げたようです。次回は、いよいよ日本のけん玉の誕生を検証します。

《日本けん玉協会参事 奥住壽(けん玉通信112)》

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